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ホンダ・ブロスが発売されたのは1988年、時代は正にレーサーレプリカ一色の時代でした。
毎年の様にモデルチェンジが行われ、ほんの数年前からは考えられない様な高性能車が当たり前に市販車として売られていたのです。
ところが、同時に年々実用性は低くなり、まるで競技用自転車の様な極端な前傾姿勢、少し倒しただけで破損する高価なフルカウル、軽い転倒でも廃車確実のアルミフレーム、快適性など全く無視した薄っぺらいシート…正直普通に乗るには無理が有り過ぎました。
別に、そういうバイクの存在を否定する気はないのですが、ソレばかりになってしまったら、問題です。
レプリカブーム初期の頃は、カウル無しのバージョンも販売されていましたが、その頃には、それさえも無くなっており、超高性能レーサーレプリカか、かったるいアメリカンか…しか存在しなかったのです。
そんな中で、カワサキZ2の爆発的なプレミア騒動に端を発したレトロブームが起こり、それは80年代初頭に販売された400ccの4気筒モデルにまで波及しました。
コレは、漫画の影響によるブームという面もありましたが、反面、余りに現実離れした現行モデルに対するアンチテーゼという意味合いもあったと思います。
そんな中でメーカーも、より自然体で付き合えるバイク…というのを真剣に考える様になっていたのですが…
時代は80年代後半、日本がバブル経済に向かって大いに経済的に発展している時代でした。
それは技術面でも同じであり、新しい事こそ全て…そんな時代であった為に、より自然体で…というのも難しい命題だったのです。
カウル無しで行くのは当然として…ただ、現在の市場の動向を見ると、アルミフレームは外す訳には行かない。足回りも最新のレベルを維持したいので、取って付けた様な片持ちスイングアーム…という具合に、正に二兎を追った状態で開発されたのが、このブロスだったのです。
一見上品なデザイン…も、無駄に自己主張の強いアルミフレームで全てが帳消しで、当時の本だの技術者も、出来上がったソレを見て、「結局コレ、誰が乗るの?」という感じだったと言います。
その後も、スパーダ、CB-1と同系のデザインを採用しますが、後に登場するカワサキ・ゼファーに完敗し、どれも短命に終わりました。
正直デザイン的に見ても、完全に新設計にも関わらず、レーサーレプリカからカウルを取り外しただけの様に見えるのです。
カウル無しのバイクの場合、ヘッドライトの位置、メーターの形状、ウィンカーの位置といったものがデザイン的に重要なのですが、その辺りは完全に無視。
不恰好で寸詰まりのタンク、寸詰まりの上にピョコンと跳ね上がったテール、短小包〇と言われたマフラー、唐突なデザインのホイール・・・
カウル付きが当たり前になって僅か5年で、こんな常識さえも忘れ去られてしまったのです。
当時の日本は、現場の入れ替わりが激しかったことを物語っている様でもありました。
このバイクを評すると、
1.二兎を追う物は一兎も得ず。
2.僅か5年で、現場がカウル無しのデザインを完全に忘れてしまった。
こんな感じだと思います。
某カラオケでバイクが登場する時、やたらブロスである確立が高い…なんていう話もあったりします。
投稿者: 80sourdecade | Filed under All Posts, バイク, ホンダ
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