キヤノンAL-1の操作法!
今更ながらキヤノンAL-1を購入してしまいました。
先日E-M5マーク3を購入したばかりなのに何故…?
今回日本に帰ってきて思ったのが、中古カメラ店でも、兎に角中古カメラの、しかも普及機の取り扱いが著しく減っていることなのです。
まあソレは当然ですよね…タダでさえフィルムの需要が激減していて、キヤノンF-1やニコンF2といった当時の高級機ですら1〜2万なんていう悲しくなるような値段で取引されている今日、普及機は全く値段が付かないのですから。
そんな訳で、段々と入手が困難となりつつある普及機を一台…と思い、中学生の頃に好きだったAL-1を大人買いした訳です。
私は長年キヤノンF-1を使ってきた関係で、今や不要となったFDレンズを何本も持っていますが、今更重いF-1を持ち出す気にもなれず、何か手頃な機種を…という考えもありました。
私は当時キヤノンファンであったにも関わらず、シャッター優先AEが好きでなく、そうなると、必然的にAV-1かAL-1になってしまうのです。
AV-1が絞り優先AE専用なのに対して、AL-1は1/15までとは言え、マニュアルでも使える上に、当時の最先端「フォーカスエイド」は、我々にAFの夢を見させてくれたものでした。
中学の時、クラスメイトが持っていたソレを弄って以来、実に36年ぶりの再会ということになりました。
因みに装着されているレンズは、ニューFD35−70mmF3.5- 4.5タイプAです。数年前にフジヤカメラのジャンクコーナーで、ほぼ新品状態のものを500円で救出したものです。
スタイル
1982年にAシリーズの最後に登場したAL-1ですが、グリップやペンタプリズム、巻き戻しクランク周辺の形状が、翌年登場するT50に似ています。実際に共用部品も少なからずあるということです。後述する電池蓋のトラブルもしっかり継承されています。
キヤノンは他社に先駆けて右前部にグリップを装備しました。特にA-1、AE-1プログラムの着脱式パームグリップは、デザイン的にも実用性でも斬新に見えたものの、手の大きい人には、少し指先が窮屈でもありました。
ソレに比べると、固定装備された電池室も兼ねたAL-1のグリップは非常に具合が良く、同時代ではトップクラスのホールディングだったと思います。
先ずは電池を入れましょう!
電池
単4電池2本と経済的です。
このカメラは、AV-1をベースにしているものの、AV-1が4LR44というAシリーズ共通の6Vの電池を使っていたのに対して、コチラはフォーカスエイドという先進技術を搭載していながら、僅か3Vで全てを駆動している辺りから、僅か3年の間に、かなり省電設計が進んだことが分かります。
因みに、同じくフォーカスエイドを採用しているオリンパスOM30がLR44ボタン電池を5個、つまり7.5V、ペンタックスME-FはSR44を4個で6Vとかなりの高電圧設計になっていて、しかも電池の消耗が非常に早いことを考えると、AL-1の省電設計は眼を見張るものがあります。
電池室の蓋
残念なのが、現存している機体の多くが、電池室の蓋にトラブルを抱えています。電池室内のスプリングが強過ぎて、ロックの爪に負担がかかっているのです。
コレを予防するには、
1.使わない時は電池を抜いておく。
2.蓋を閉める時は、そのまま押し込まず、ロックの爪を引っ張った状態で閉める。
この2つを守るだけでも、破損はある程度防げると思います。
操作系
操作系は、兎に角シンプルです。
右側
レリーズボタン周りのレバーはLがロック、Aが撮影、Sがセルフタイマー。
シャッターダイヤルをAに合わせれば、絞り優先AEになります。尚、Aのポジションのみロックが掛かり、A以外に合わせる時には、ダイヤル真ん中のロックボタンを押しながら回します。
左側
巻き戻しクランクと同軸にあるのは、ASA(ISO)のダイヤルです。脇にあるクロームのボタンを押しながら回します。最高で1600と、ISO12800が当たり前の今日からは考えられないですね。
裏蓋を開ける時は、巻き戻しクランクを引っ張り上げます。
露出補正
エプロン部左側にあるクロームのボタンは、逆光補正ボタンで、押しながら撮影すると、+1.5段になります。
露出補正はコレだけなんですが、より細かく設定したい場合は、ASAダイヤルを使うことになります。
当時のキヤノンは、ニューF-1とA-1以外には露出補正ダイヤルを設けていなかったんです!
A-1は露出補正ダイヤルとAEロック、AE-1プログラムはAEロックのみ、そしてAE-1、AL-1、AV-1は逆光補正ボタンのみ…という不思議な作り分けをしていたのです。
ファインダー
スクリーンはフォーカスエイドが有るので、前面マットになっていて、中央に測距範囲を示すマーク①が付いているだけです。
右側のメーターは、絞り優先AEの為のシャッタースピードのスケールで表示されます。②が露出オーバー、⑥が露出アンダーを示しています。
④はバッテリーチェックの警告で、巻き戻しクランク隣のバッテリーチェックボタンを押した時、メーターが赤い部分よりも上を指せばOKとなります。
視度補正レンズ
やはりMFのカメラの場合、幾らフォーカスエイドが有るからと言っても、やはり視度補正レンズは欲しいですよね?
当然従来のAシリーズ用のモノは生産中止となっていますが、今でもキヤノンの視度補正レンズEが比較的簡単に入手可能です。
コレはフィルム時代のEOS用ですが、既に生産中止の様ですので、必要な方は早目に押さえておいた方が良いでしょう!
フォーカスエイド
AL-1の最大のセールスポイントは、何と言ってもピントを知らせる「フォーカスエイド」です。コレはAFを実現する一歩前の段階のものでしたが、当時の写真で最も難しいのがピント合わせであったのは事実で、ソレが電子的にアシストされるというのは、当時初心者であった私には、夢のシステムの様に思えたものでした。
この様に表示される時は「前ピン」で、ピントリングを矢印の方向に回します。
この様に表示される時は「後ピン」で、ピントリングを矢印の方向に回します。
コチラが「合焦」を示しています。
さて、その実力は・・・被写体が中央にある時は良いのですが、ソレ以外は余り使いやすいとは言えませんね。
要するに中央一点のAFと同じ様な感じです。
しかも、縦線の無い被写体やコントラストの低い被写体は苦手で、網戸越しの被写体なんかは、網戸にピントが合ってしまいます。
私はAFというものは、AFターゲットパッドやタッチシャッターで初めて完成に近付いたと思っていますが、やはりコイツはその初期の初期…まあオモチャには丁度良いですね!
それに、35−70mmF3.5-4.5の様な余り明るくないレンズを使用する場合、暗い所ではフォーカスエイドが作動しないこともあります。50mmF1.4だと、より暗い所でも問題なく作動しますけど。
それにしても…フォーカスエイドの表示がこれだけ画面に出っ張っているのは、やはり邪魔ですね!
連写
AV-1と同様、A-1とAE-1プログラム用モータードライブMAは使用できず、パワーワインダーA及びA2で、秒2コマの連写が可能になります。まあフォーカスエイドの速度からして、モータードライブに追従出来るとも思いませんし、コレは妥当な選択だったと思います。
因みに当時のフォーカスエイド機でモータードライブが使用可能だったのは、オリンパスOM30とニコンF3AFの2機種で、他は皆秒2コマのワインダーのみの設定でした。
価格
当時の価格が58,000円と、人気のAE-1プログラムと僅か2000円しか違わなかったことから、人気はイマイチでした。フォーカスエイド以外は入門機レベルの内容、その割には高過ぎる…という事だったのです。
それが今や3000円…w
巻き上げも、シャッター優先AEが無いせいか、A-1やAE-1なんかよりもスムーズです。
シャッター音は、Aシリーズというよりも、寧ろオリンパスOM2桁に似ている様な気がします。
あとはメーターを見て、場合によっては絞りを動かしてやるだけです。最高速度が速度が1/1000と、現在の1/4000が当たり前なのと比較すると、直ぐにオーバーに振り切れてしまいます。
取り敢えずフィルムを一本装填して、一切露出補正をせずに36枚撮影してみましたが、驚いたことに全コマ適正露出でした。
ただフィルム装填時、逆巻式だったのが、F-1の順巻きに慣れている私には、少し面倒でした。
私はフィルム時代、殆どキヤノンを使ってきましたが、キヤノンファンというよりは、寧ろF-1ファンで、他のカメラは正直イマイチな印象しかありませんでした。
そんな中で唯一好きだったのがAL-1だった訳ですが、今回、36年ぶりの感動の再会…ということになりました。
時期を見てオーバーホールをしても良いのですが…果たして使うチャンスが有るかどうかは…。