あらいぐまラスカルは、1977年に放映された世界名作劇場の作品です。
作者スターリング・ノースの自叙伝が原作で、背景は20世紀初頭のウィスコンシン州の田舎街、彼が少年時代に母親を失ったアライグマの赤ちゃんを保護して育てた話しです。
最初は可愛かったラスカルも、大きくなるにつれて悪戯が酷くなり、檻に入れて飼うことになりますが、最終的にはスターリングの母の死去、そして父のビジネスの失敗から、スターリングは都市ミルウォーキーに引っ越すことになり、ラスカルは遠い山の中に放す所で物語は終わります。
この物語の影響で、日本でもアライグマがペットとして大人気となり、ソレが後に野生化し、今は日本の生態系に於ける深刻な脅威となっているのは有名な話しです。
当時の日本人は、そこまで理解力が無かったのでしょうか?
この物語を見れば、カワイイだけじゃない、悪戯が酷くて近隣とトラブルを起こす所もシッカリと描写されているのです。
動物との共存の難しさこそが、この物語の主題であった筈なのですが…。
コレが実際のアライグマですが、アニメと全然違うじゃないですか!
この可愛らしい?表情も、カナダ雁の家族の様子を伺っているんです!
幾ら子供が欲しがったとしても、決定権は親にあります。
先ず実物を見て、外見からしてコレだけ違うのに、飼おうと思いますか???
その親がアライグマを子供に買い与えたとなると、余りに無知か、理解力がなかったのか…という事になります。
尚、この物語内では触れられていませんが、後にスターリングは小児麻痺に苦しむことになります。
日本では余り知られていませんが、アライグマには悪い「アライグマ回虫」という細菌を持ち、脳に障害が起こることで知られていますが、もしかしたら、この影響だったのでは?とも思えてしまいます。
カナダの公園でもこのアライグマは大人気です。確かに仕草が面白いし、表情豊かでチャーミングなのですが、同時に鴨やカナダ雁の雛の天敵でもありますし、その行動から、家には絶対に来てほしく無い動物の筆頭でもあるのです。
実は私の住んでいる所では結構見かけるのですが、果物の木に登って、熟れた果物だけ選んで食べたり、虫を取る為に芝生をグチャグチャに掘り返したり、糞害等、決して嬉しい存在ではないのです。
更に厄介なのは、かなり遠くに連れて行っても、元の場所に戻ってくる習性がある事です。戻って来られない様にするには、川や海の「反対側」に連れて行かないとダメだと言われています。
例えばバンクーバーに居る個体なら、橋を渡ったノースバンクーバーなり、リッチモンドなりに連れて行かないとダメだと言われています。
ですので、スターリングがカヌーで川を上って行って放したというのは、理に適った事だったのでしょう。
何れにしても、このアニメ一作品が日本の生態系に与えた影響は極めて大きいものでしたが、やはりその背景には、「日本人の理解力の無さ」という問題が有ったと言わざるを得ませんし、アライグマ自身には罪は有りません。