コンタックスTvsデジタル
コンタックスTvsデジタルは、2005年に私が最初に購入したデジタルカメラでした。
当時、京セラのカメラ撤退が決定された直後で、当初12万もしたカメラも大安売りが始まり、当時住んでいたニュージーランドで450ドル程度で購入できたからだったのですが、購入したその日から、今まで見た事も無い色の良さに驚き、同年のアメリカ旅行では、大いに活躍したものでした。
それがデジタルへの全面移行への切っ掛けとなったのですが、結局Tvsデジタルは現在、白黒2台手許にあります。
このカメラを最初に目にしたのは、発売直後、オークランドのカメラ店でした。当時全くデジタルに興味なく、フィルムばかりであった私ですが、このカメラだけは、少し気にはなったのですが…フィルム時代のTvsの値段からしても、そして、当時のニュージーランドでは、日本で2〜3万で買えた普通のコンデジが、当たり前に1000ドルもしていたことを考えると、まるで別世界の話しであり、値段さえも確認しませんでした。
<手触り>
先ずは手に持った印象ですが・・・かつては、このチタンボディーというものは大変に高品位に感じたものでしたが、現在、各社ともより安い材質で、高級な肌触りを実現しているせいか、今となっては、特に何と言うこともありません。
しかし、この人口サファイアのレリーズボタンは、やはり良い肌触りですね・・・。この辺りは、京セラならではのものですが、他社も、もう少し見習って欲しいところです。反面、押し心地はイマイチなのでずが・・・。
発売から13年経った今日、改めてスペックを見てみると・・・
<主要スペック>
画素数: 525万画素(総画素) 500万画素(有効画素)
撮像素子: 1/1.8型CCD
レンズ :35mm~105mm(35mm換算)F2.8~F4.8
撮影感度 :ISO80~400
記録メディア:SDカード、マルチメディアカード
液晶モニター:1.6インチ 8.5万ドット
ファインダー:光学
手振れ補正:無し
動画撮影サイズ:320×240
最長撮影時間:120秒
-上のモニターは、フィルム時代の名残りですが、正直要らなかったですね…
正に時代を感じさせますね・・・。
<センサー>
500万画素のCCD…購入当時、既に発売から2年経っていましたが、当時は一眼レフでも600万画素クラスは多く、500万画素というのは、十分という認識でした。
そして現在少数派になりましたが、CCDの方が温かみの有る描写・・・と言う評価がある様に、やはり温かみのある描写と言えるでしょう。
<レンズ>
「写真はレンズで決まる」・・・カール・ツァイスのバリオゾナー7.8-21.9mmF2.8-4.8(換算35-105mm)。当時のコンパクトデジカメというと、大体換算35mm始まりが多く、28mm始まりというのは珍しかった様に記憶しています。私自身、余り広角は使わず、50~100mmクラスの使用が多いので、このズームレンジは結構便利なものでした。
ソレに比べると今使っているパナソニックのレンズは、換算24-70mmと70-200mmなので、どうもレンズ交換の頻度が多くて、煩わしかったりします。
因みにフィルム時代のTvsは、28-56mmの2倍ズームで、F値も3.5-6.7・・・コレでも、当時のズームコンパクトがF8を当たり前に超えていたことを考えると、遥かにマシだったのですが・・・。
<高感度>
-Iso400での夜景・・・ノイズが何処と無くフィルム的だと思いました。
ISO感度が最高400!当時は一眼レフでも1600までというのが一般的で、一眼レフでも1600は相当酷い感じでした。このカメラのISO400は、ニューヨークの夜景なんかで結構使ったものですが、どこかフィルムっぽい感じで、余り悪い印象は有りませんでした。
<記録メディア>
現在主流のSDHCは既に使えないことになります。SDカードなので、最大2GBまでですが、正直、1Gもあれば十分でした。最初に買ったカードが128mbで、それでも当時、ニュージーランドで50ドル近く払ったと記憶しています。
128mbで画質を最高にして、大体50枚程撮れます。フィルム時代からの人間の私は、「50枚も」撮れる・・・と思ったものでしたが、デジタルになると、撮影スタイルも変わり、今までは撮らなかったものまで撮る様になったので、256mb、512mbと随時追加購入したものでした。
1.6インチ・・・古いカメラを手の取った時、最も驚くのが、このモニターの小ささだと思います。同時代の高級一眼レフ、コンタックスNデジタルですら、あの巨体にも拘らず、僅か2インチなんですから・・・。
しかも、この解像度が8.5万ドット・・・現在使用しているオリンパスE-M10が3インチで104万ドット・・・正に桁が違うとは、この事です。
明るい所で見易くする為に、折り畳みのシェードを使っていましたが、最近、もうこのサイズは手に入らない様ですね・・・。
<ファインダー>
このカメラには、今では完全に絶滅した、光学式ビューファインダーも付いていて、しかも視度補正まで内蔵していますが、当然パララックスはそれなりにあるので、正確なフレーミングをするには、やはりモニターを使うことになります。
フィルム時代のTvsに比べると、ファインダーに情報が表示されない辺りからしても、既にライブビューを主として考えていたのでしょうか?
現在、光学式ビューファインダーを内蔵したコンデジは皆無です。やはりコストダウンは当然でしょうが、デジタル化によって、撮影直後にモニターで表示できること・・・それは即ち、ファインダーの視野率の低さが瞬時にわかってしまうから・・・というのも有ったと思います。
<使い心地>
スイッチをオンにしてから、撮影可能になるまで、大体4秒位かかりますが、反面、スイッチを入れっぱなしでも、余りバッテリーを消耗しないので、使う時は大体スイッチ入れっ放しでした。
AFも当時のレベルでも非常に遅いことを指摘されていましたが、実際に合焦まで1秒程度と遅い上に、苦手な被写体が多く、とても実用的とは言えませんでした。更に、トップに有るAFロックは、正に欠陥レベルで、同じ被写体でも、毎回の様に撮影距離(AFロック時、モニターに撮影距離が表示される)が違い、全く使えませんでした。
反面、マニュアルフォーカスが出来るのが、コンデジとしては珍しいところでした。
<マニュアルフォーカス>
MFとは言っても、ファインダーやモニターを見ながらピント合わせをする訳でも無く、0.6m、0.7m、0.8m、1m、1.5m、2m、5m、∞から、被写体との距離を元に、どれか適当に選ぶという、所謂目測式なのですが、コンデジ特有の被写界深度の深さから、少々のズレは十分に許容範囲に入るので、コチラの方が実用性は上でした。欲を言えば、2mと5mの間に3mが欲しかった所ですけど・・・。
起動の遅さは、電源入れっ放しで、AFの遅さはMFで、露出はプログラム・・・コレで実に手頃なスナップカメラへと変貌したのです。
<手振れ補正>
手振れ補正無し・・・このカメラを初めて使用した時、少し暗くなると、途端に手ブレれが増えるのに驚いたものでした。フィルム時代は、1/15程度でも何とかなったのですが、このカメラだと、1/60でも結構ブレが気になったのです。本体の軽さ、レリーズボタンのストローク等も理由も有るでしょうし、デジタル故に拡大が容易で、ブレに気付きやすい・・・というのも有ったでしょう。何れにしても、デジタルはブレ易いというのは、長年のフィルムの経験から思ったものでした。
後にライカ・デジルックス3を購入しましたが、やはり一眼レフを毎日持ち運ぶ気にもなれず、カバンの中には何時もコイツが入っていました。
Tvsデジタルを殆ど使わなくなったのは、やはりミラーレスのパナソニックGX1を購入した時だったと思います。毎日持ち運べるミラーレスに取って代わられたのです。
しかし、古い写真を見ていると、やはり色に関しては、今だにこのカメラがダントツに良いというのが正直なところですね・・・。
鮮やかながら、軽々しさが無く、しかも濁りの無い爽やかな色で、現在使っているどのカメラでも、残念ながらコレには敵わない思っています。
<付属品>
最後に付属品ですが、昔のカメラの例に漏れず、16mbのSDカード、充電器、USBケーブル、リモコン等が付いてきました。
16mbで撮影出来る枚数というと・・・最高画質で大体ファイルサイズが2mb程度なので、余裕を見て6枚位が限度でしょう・・・これじゃ気休めにもなりません。
因みに、後に購入したライカ・デジルックス3には、1GBのカードが付いており、当時、ソレがニュージーランドで1万円以上したことから、流石高級機は違う・・・なんて思ったものでした。
リモコンは、フィルム時代の末期、よく付いてきたものですが、今日、スマホで代用できる様になったこともあり、完全に消えました。しかしコレ・・・バッテリーの交換は破壊覚悟じゃないと出来ないんですよね・・・。
<充電器>
充電器は、カメラ本体の充電端子に差し込んで使用するタイプでした。
しかし、アメリカ旅行時は、ユースホステルの相部屋を多く利用するのは分かっていたので、そういう環境では、充電の為にカメラ本体を置きっ放し・・・というのは問題があるので、現在一般的な、バッテリーを取り外して充電するタイプの充電器が必要になりました。
このタイプは純正オプション扱いでしたが、リコーBJ-2という充電器がそのまま使える上に、更に、バッテリー+充電器(BJ-2)のセットが割安なので、コレを購入しました。ただ、リコーのバッテリーは、若干容量が大きいので、少しリスキーでもありますが、充電器自体は問題なく使えます。
<故障>
このカメラでは、とにかく故障を沢山経験したのですが、もしかしたら、このリコーのバッテリーが原因であった可能性も・・・まあ、リコーのバッテリーの使用を止めた後も、故障はしたので・・・。
既に京セラの岡谷サービスセンターも業務を終了しており、故障した時点で終わりということになります。
<紛失事件>
一度ロサンゼルスのバスの中で、シルバーを紛失したことがあります。バスの中でウトウトしていて、下車するバス停で丁度目が覚め、慌てて下車したところ、ストラップがずり落ちたのです。
私が下車した時、結構乗客が居たのですが、驚いたことに、私の元に戻ってきました!日本ならともかく、アメリカでは、正に奇跡と言えるでしょう。
<最後に>
今日、スマホの普及で、一番割りを食っているのが、コンデジだと言えるでしょう。各社、大幅にラインアップを整理して、より特徴の有るモデルだけを販売する様になってきています。
しかし、そんな時代にも拘らず、当サイトでは、不思議とコンタックスTvsデジタルに関する記事へのアクセス数が多いのです。
そんな理由から、改めて、より詳しく書いてみました。
最近は、デジタルしか知らない世代がフィルムに目を向けたり、やはり精鋭化し過ぎたデジカメに対して、食傷気味に感じている層が、少なからず居るという事なのかも知れません。
このカメラは、発売当時から、間違っても最新鋭のスペックと呼べるものではありませんでしたし、最も高画質であった訳でも無く、最も使い易いカメラという訳でもありませんでした。
しかし、やはりカール・ツァイスなのか、その独特な描写は、画質云々を超越した独特な雰囲気、色合いを持つものだったのは確かだと思います。
この10年、ライカ・デジルックス3、パナソニックGX1、フジXA-1、そして現在はオリンパスE-M10、更にはパナライカレンズと使ってきましたが、やはり、その色調は一歩及ばない・・・というのが正直なところで、それ故にコンタックスの撤退は残念で仕方有りません。
にほんブログ村