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こちら葛飾区亀有公園前派出所57巻

私の周りには、100巻以前の「こちら葛飾区亀有公園前派出所」は大体揃っているのですが、欠けていた57巻を今回購入しました。

この辺りのエピソードは、殆ど当時リアルタイムで読んだものばかりですが、今改めて読んでみると、非常にパワフルですね…。

文豪両津勘吉先生の巻

両さんの書いた落書きの様な小説が大ヒットして、それがメディアでも大々的に取り上げられる話しですが、当時増え始めた芸能人の本なんかを暗に批判している様でもありますし、驚く事に、後のアメリカのアニメ「サウスパーク」の The Tale of Scrotie McBoogerballs をも思わせる内容です。

 

この巻は、天国、神様、幽体離脱、ロボットといった80年代後半に登場した非現実的なストーリーが暴れまわっているのが特徴です。

両さん 天国に行くの巻

天国での手違いで急死した両さんのが、その死亡手続きを訂正するまでの間、魂のままの両さんが部長に取り憑いて暴れ回るのが見ものです。

極悪コンビ大進撃の巻

ロボット派出所のダメ太郎が作った巨大ロボットがテスト中に制御不可能に陥ります。ロボット派出所の炎の助と両さんが暴走したロボットの中に…しかも、そのロボットの燃料はニトロ!

制御不能の巨大ロボットは、葛飾署に向かって暴走するものの、何とか燃料カットに成功し、もう少しで停止…という時に一斉砲撃を受けて大爆発!

霊幻両津の巻

前回の大爆発で葛飾署に恨みを持った両さんが、霊媒師によって幽体離脱し、本部長に取り付き、葛飾署を世界中の笑い者に…という復讐劇に繋がります。

一般にこのロボット派出所は評判が良くなかった様で、短命に終わっていますが、私個人的には嫌いじゃないですね…。

そして何と言ってもこの巻の最大のヒットは「浅草物語」でしょう。

浅草物語

両さんが葛飾署の前で、一人の男が連行されていくのを目にします。その男こそ、両さんの少年時代の友人、村瀬だったのです!

村瀬はクラス1の優等生だったけれど、両さんと仲が良く、両さんの仕込んだベーゴマでチャンピオンになったものの…親の都合で渋谷に引っ越し、それ以来の再会だったのです。

弁護士になると言っていた村瀬が暴力団になり、悪ガキだった両さんが警官という立場での再会でした。

村瀬は護送中に浅草付近で逃亡し、破門になった以前所属していた組事務所に報復に行く時、両さんがその前に立ちはだかります。

村瀬が何処に逃げたか見当すら付かない他の警官たち。浅草なら路地裏まで知り尽くした村瀬と両さんは、当然の様に出会います。

「何がお前を変えたか知らないが、人生投げた時点でお前の負けだ!」という両さんの言葉が胸に沁みます。

後で必ず自首するという村瀬を見過ごす両さん、影で見ていた中川が追おうとするものの、それを止める部長。

結局予定通り村瀬は出頭しています。

そして、昔村瀬と一緒に埋めたベーゴマを入れた缶を掘り起こしてみると…彼からの手紙が入っていました。2001年に会うことを楽しみに…と。

しかし、暴力団の名前が集英会ってのも…w

こち亀には、様々な感動系ストーリーがありますが、その中でもコレはトップクラスに入る名作と言えます。

両津代表取締役の巻

当時はまさにバブルの真っ只中。ウォータフロントの巨大開発を手がける中川の会社、行く行くは江戸っ子を追い出すのも仕方ない…その中川の驕った姿勢に怒った両さんが、中川から手書きのサインを入手、それで両さんを社長に委任するという委任状を偽造した上で中川を監禁し、会社を乗っ取り、プロジェクトを全て中止にします。

インフラも徹底的に破壊し、丸一日で1兆円もの被害を与えた両さんですが、そのまま現金10億円持って香港に高飛び、それを元手に大富豪に…。

考えてみたら、中川の社長としての顔を見たのは、この時初めてだったのかも知れません。そして、当時の地価高騰の風潮を暗に皮肉った名作でもあります。

こうやって見ていると、実に内容の濃い一冊ですね… 当時私は、高校を卒業し、東京で一人暮らしを始めて間もない時期でしたが、まさに世の中バブルの真っ盛り…アチコチで景気のいい話を聞くと同時に、住環境は絶望的な時代でした。

そんな時代を改めて思い出した様な気がします。

こち亀という作品は、単に漫画の域を超えて、歴史的価値という面でも、改めて読むと、様々な発見があります。

この辺りのエピソードがジャンプに掲載されたのは1987年、当時こち亀も既に10年目に突入した事から、霊媒師、天国、地獄、ロボットと様々な奇想天外な展開で、新たな道を模索していたといえますし、世の中の景気の良さも合わせて、最もエネルギッシュな時代だった様に思います。